税金

海外の仮想通貨取引所を利用した際の税金の計算方法と扱い方を解説

海外の仮想通貨取引所を利用した際の税金

2017年頃にものすごい勢いで価格が上昇したことから注目を集め始めた仮想通貨。

いわゆる「億り人」が多く誕生したのは記憶に新しいですよね。

ところが億り人になるほど利益をあげた時に頭を悩ますのが、税金問題です。

税金や手数料の観点から、国内の仮想通貨取引所だけでなく海外の取引所を視野にいれる方もいると思います。

今回の記事では、海外の仮想通貨取引所を利用した際の税金の計算についてや、仮想通貨取引における節税手法についてお伝えします。

今回の記事を読めば、

  • 国内と海外の仮想通貨取引所の違いについて
  • 仮想通貨取引において、合法的に税金対策を行う方法について

理解することが出来るようになります。

海外の仮想通貨取引所を活用することで税金は変わるのか?

海外の仮想通貨取引所を活用することで税金は変わるのか、ということについて結論から申し上げると、日本国内に在住している限り、国内と海外の仮想通貨取引所とで税金は変わりません。

日本に在住している限り、日本の税制に則って税金を納めることが求められます。

海外の仮想通貨取引所を使っていれば、取引の履歴や利益がどれくらい出ているのかバレないのでは?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
確かに海外取引所で取引をしている限り、日本国内の税務署や金融庁などはその取引を捕捉することは難しく、実際にそのような対応を取られることもほとんどありません。

しかし、海外取引所から日本円に換金する時は現状だと国内の取引所を経由する必要があるため、そのタイミングで税務署に捕捉される可能性があります。
国内への送金時に税務署が捕捉できる以上、日本国内の税制に則って納税する義務が発生します。

仮想通貨における税金計算の計算方法

海外の取引所を活用したとしても税金がかかってしまう、ということはご理解いただけたかと思います。

ここからは、税金の計算方法個人で出来る節税策について解説していきます。

(1)仮想通貨の所得区分

仮想通貨において発生する所得は、2020年時点での税制では雑所得に分類されます。

雑所得とは、給与所得や譲渡所得、配当所得など給与や通常の金融商品の取引などで得られる所得に分類されないものを指します。

雑所得は、

総収入額 – 必要経費 = 雑所得

の計算式で所得額を算出します。

また、雑所得の特徴として「総合課税」と「累進課税」が挙げられます。

総合課税とは今回の場合、雑所得が給与所得や配当所得など他の所得と合算されて、課税対象の所得が算出されます。
累進課税とは、課税対象の所得額が大きくなればなるほど適用される税率が大きくなるという制度です。

あなたがサラリーマンであれば、仮想通貨で得た雑所得は給与所得と合算されて税額が算出されます。

以前話題になった「億り人」の方々は累進課税により、住民税とあわせて最大税率55%が適用されたことも記憶に新しいかもしれません。

(2)課税対象となる「所得」が発生するタイミング

通常の金融商品の取引とは異なり、仮想通貨には大きく分けて①売却時②決済時に課税所得が発生するタイミングがあります。

それぞれ具体的に見ていきましょう。

①仮想通貨を売却したとき

仮想通貨を安い時に購入して、高くなった時に売却し、その差額分が利益となり、この利益に対して課税されます。

これは株式投資などと似ているのでイメージが湧きやすいと思います。

計算式は下記です。

所得額 = 仮想通貨の売却額 – (仮想通貨1単位あたりの取得価額) × 数量

例えば、ビットコインを取得価額80万円で2単位分購入し、時価が100万円になった時に売却すると、所得額は上記の式に当てはめて

100万円 × 2単位 – 80万円 × 2単位
= 200万円 – 160万円
= 40万円

となります。

②仮想通貨を使って決済したとき

ビックカメラやコジマをはじめ、ビットコインなどの仮想通貨を利用して決済が出来るお店が増えてきましたね。

仮想通貨を使って決済をする場合も、税金の発生の対象になります。

一度仮想通貨を円に変換し、それを使って決済した、と見なされるため税金が発生するのです。

計算式は、

所得 = 商品価格(決済価格) – (仮想通貨1単位あたりの取得価額) × 数量

です。

ただし商品を決済する際に、取得価額よりも売却価格が下がっていれば税金はかかりません。

③保有している仮想通貨を他の仮想通貨に交換したとき

②と似たような考え方になりますが、ビットコインを使ってイーサリアムなどを購入するなど、今保有している仮想通貨を使って他の仮想通貨を購入する際も、課税所得が発生する可能性があります。

これも、一度保有している仮想通貨を日本円に換金に換算してから他の通貨を購入するとみなされるためです。

所得 = 購入する仮想通貨の時価 – (仮想通貨の取得価額) × 数量

が計算式となります。

(3)仮想通貨の取得価額(原価)の計算について

次に取得価額の計算方法について見ていきます。

取得価額の計算方法は、移動平均法総平均法の2つがあります。

移動平均法では、仮想通貨を購入する都度、取得価額を算出します。

一方の総平均法は、期間内の購入金額全体を購入数量で割って取得価額を算出します。

具体例を挙げて、計算の違いを見ていきましょう。

ある仮想通貨において、

  • 時価200円で1通貨を購入
  • 時価300円で1通貨を購入
  • 時価400円で1通貨を売却
  • 時価450円で1通貨を購入

の取引をしたとします。

移動平均法で計算すると、

  • 200円+300円=500円の購入額
  • 500円÷2通貨=250円が平均購入額
  • 400円-250円=150円の利益←150円が課税所得
  • 450円+250円=700円
  • 700円÷2通貨=350円が新しい平均購入額

となります。

一方、総平均法で計算すると、

  • 200円+300円+450円=950円
  • 950円÷3通貨=316.67円が平均購入額
  • 400円-317円=83円が課税所得

となります。

平均法

このように、計算方法の違いで所得税額が大きく変わります。

2020年時点では、税務署に届け出をすることで移動平均法を、届け出を出さなければ総平均法が採用されるようになりますので、移動平均法を選択したい場合は忘れず届け出を提出するようにしましょう。

海外の仮想通貨取引所を使うメリット

海外の仮想通貨取引所を使っても、国内の仮想通貨取引所で取引をした場合でも税金の取り扱いや計算方法が同じならば、海外の仮想通貨取引所を使う理由はないのでしょうか?

海外の仮想通貨取引所には国内では得られないメリットもあります。

以下で具体的に紹介します。

(1)海外仮想通貨取引所のメリット① 取り扱い銘柄が多い

海外の仮想通貨取引所では国内の取引所と比較して、圧倒的に取り扱い銘柄が多いです。
国内の大手取引所であるbitflyerやCoincheckをもってしても、取り扱い銘柄は10~15種類程度です。

一方海外の大手取引所であるBINANCE(バイナンス)では570種類、Bittrex(ビットレックス)では263種類と、国内取引所よりも圧倒的に選択肢が多いです。
また、怪しい草コインなどは排除するように取引所への上場に対する基準はかなり厳格に運用しているので、その点は安心して取引しても問題ないです。

仮想通貨といえばビットコインなどが有名ですが、ビットコイン以外にも成長性の高い仮想通貨はたくさんあり、100倍や1,000倍にまで価格が上昇した銘柄もありました。

海外の取引所を活用することで、国内よりも利益を追いかけていくことが可能な点がメリットです。

(2)海外仮想通貨取引所のメリット② 取引量が多い

国内の取引所よりも仮想通貨の取引量が多い点も、メリットの1つです。

取引量の多さというのは非常に大切で、もし取引量が少ないと、買いたい時・売りたい時に売買が成立しない、ということになりかねません。
せっかく利益の出るタイミングなのに売買が成立しないとなると、チャンスを手放してしまいますね。

取引量の観点から見ても、国内最大手のbitflyerが世界取引量ランキング16位、Coincheckが84位と、世界の取引所と比較して取引量が少ないです。
先ほど紹介したBINANCE(バイナンス)は世界最大の取引量を誇る取引所です。

(3)手数料が安い

国内の取引所と比べて、海外の取引所の方が手数料が安い傾向にあります。
特にビットコイン以外のアルトコインと呼ばれる通貨を取引する場合、手数料に差が出てきます。

例えばbitflyerだと、アルトコインの売買には0.1%~6.0%の手数料を含んだ価格で取引がされています。

BINANCEではアルトコインの売買手数料が0.1%、さらに同社が発行しているBNBトークンというものを保有していると売買手数料が0.05%まで下がります。

このように、海外取引所を活用した方が、特にアルトコインの売買をするにおいて手数料分有利に投資を進めていくことができます。

個人で出来る仮想通貨取引における税金の節税対策について

国内の取引所と海外の取引所とでは税金の扱いや計算方法は変わらないです。
その中で、海外取引所を活用した方が手数料や取引できる銘柄数で有利だということもわかりました。

最後に、個人で出来る仮想通貨の節税について解説します。

仮想通貨の税金は上述した通り雑所得で総合・累進課税のため、利益が出れば出るほど、税金額が大きくなってしまいます。
そのため、合法的に出来る節税対策を知っておきましょう。

(1)仮想通貨取引にかかる経費を明確に処理する

仮想通貨取引に関する経費を計上することで、税法上の所得を減らすことで節税する方法です。

仮想通貨に関する経費計上が出来るものとしては、

  • 売買手数料
  • 仮想通貨を学ぶセミナーの代金
  • 関連書籍
  • 仮想通貨保管のためのウォレット

などが挙げられます。

仮想通貨取引に活用した費用については、すべて経費計上できる可能性があるため、領収書や明細などは必ず保管するようにしましょう。

ただ経費計上できる可能性があるものの、すべてのものが必ず経費計上できるとは限らないため、必ず税理士の方の専門家の判断を仰ぐようにしましょう。

(2)短期売買ではなく長期保有する

短期売買で1つ1つの取引を確定させるのではなく、長期保有することで税金を繰り延べることも有効な節税策です。

仮想通貨に限らず金融商品の取引においては、購入→時価が高くなるのを待つ→売却(売りポジションの場合は逆)の流れになります。
購入~売却を確定した時点で税金の発生が確定します。

一方長期保有前提で、購入してから売却をしなければ、税金は発生しません。

あまり短期売買で売買数を増やさないようにして課税所得を抑えるようにしましょう。

一方、これまで短期売買を中心にしてきた方は、損益通算を視野にいれましょう。

仮想通貨取引において、その1年間の取引において発生した損失であれば損益通算をして利益と相殺することが出来ます。

そのため、含み損のある銘柄を持ちながらも年間のトータルで利益が出ている場合は、その含み損の銘柄を売却し利益と相殺することで税金額を減らすことができます。

ただし、株式投資での黒字分など、他の所得区分との損益通算をすることはできませんので、ご注意下さい。

長期投資によって売買回数を減らすと同時に、含み損がある場合は発生した利益に損失をぶつけることで相殺するようにしましょう。

(3)利益が20万円以内になるように利益確定をする

利益が数十万円程度であれば、その年の利益確定を20万円以内に抑えることで節税が出来ます。
雑所得に対する税金は課税所得が20万円以上にならないと発生しません。

利益額が20万円以内になるように調整していけば所得税をカットすることが出来ます。(住民税はかかるのでご注意ください)

(4)個人事業主として開業する

個人事業主として開業することで節税する方法もあります。
個人事業主として開業することで青色申告の活用ができるようになり、年間65万円分の所得が控除されるようになります。

また雑所得として計上される仮想通貨はその年の損益しか通算することができないのですが、個人事業主として開業し「事業所得」として計上することが認められると、最長3年の間、赤字を繰り越すことが出来ます。

個人事業主として認められるには

  • 事業として仮想通貨投資をしている
  • 一過性ではなく反復的に投資をしている
  • 仮想通貨の利益が生計の柱となっている

などの要件をクリアする必要がありますが、この条件をクリアすることが出来れば個人が出来る節税の中では非常に有利なものになりますので、オススメです。

(5)法人化する

専門家への依頼など設立するには30万円以上はかかりますが、法人化することが最も節税効果が高いです。

個人の所得税・住民税の最大税率が55%に対し、法人税は最大でも33%と少ない税率で済みます。
法人化をした方が様々な税制上のメリットを得ることが可能です。

個人では他の所得区分と損益通算をすることができませんが、法人化することで所得区分がなくなるため、損益通算をすることができます。
また、赤字が出たとしたら、翌年以降最長3年間赤字を繰り延べて所得控除をすることができる点もメリットになります。

これに加え、法人化することで経費計上することのできる支出の対象が広がります。

このように、法人化することで個人よりも税制上の恩恵を多く受けることが出来るため、数百万円単位の利益が仮想通貨投資で作れるようになったら、法人化することを検討しましょう。

(6)他の節税対策と組み合わせる

仮想通貨取引に限らない節税対策がありますので、それを組み合わせることも検討しましょう。

同じ投資関連でいえば、iDeCo(確定拠出型年金)への掛金拠出を検討しましょう。
iDeCoは退職後にもらえる年金への掛金を拠出する制度のことを指しますが、拠出する掛金は全額所得控除の対象になり、発生した利益や利息はすべて非課税となる、非常に節税効果の高いものになります。

個人事業主・自営業者で月額6.8万円、会社員で月額2~2.3万円が掛金の上限にはなりますが、年額で24万~81.6万円が所得控除になりますので、仮想通貨で得た利益を相殺するようにしましょう。

他にも、ふるさと納税を活用して寄付することで、2,000円を超える部分が所得税・住民税から控除されるようになります。
その年の年収によって寄付できる上限はありますが、実質2,000円で節税を図ることが出来るのでオススメです。

まとめ

国内と海外の取引所のどちらを使っても、仮想通貨投資において発生した税金を納めなくてはならない、ということは変わりません。
それであれば、投資上でも税制上でも有利な選択をするようにした方がオトクですね。

仮想通貨投資についていえば、国内取引所を活用するよりも海外取引所を活用した方が、銘柄の選択肢の豊富さ・売買の取引量の大きさ・手数料の安さの観点から有利です。

そのうえで、短期売買で頻繁に利益確定をするのではなく長期での売買をしたり、年額20万円以内の利益に抑えながら売買をしたり、大きく利益を出し続けていけるのであれば法人化をして税効果を高めたりして、最終的に手元に残るお金を最大化するように工夫しましょう。

iDeCoやふるさと納税は、誰でもできる個人の節税策として非常に優秀ですので、ぜひ検討してください。

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